わたしはビリー・ジョエルをほとんど知らないけれど、
音楽にほとんど興味のなかった彼が、わたしと繋がったことで
生で音楽を聴きに行こうと思って動いてくれたことが嬉しくて、
こんな風に少しずつ出会い系で歩み寄って行けたらいいな、と
幸せをかみしめた夜でした。コンサート後の食事中に、彼が胸ポケットから紙を取り出しました。
それは、わたしたちのこれからの予定が表にされたもので、
『部屋探し』『両家顔合わせ』『引越し』などが書き込まれていました。
それは、マイペースな彼に「この人本当にわたしとの結婚を真剣に考えて
くれてる?」などと心配だったわたしの不安を解消してくれました。食事のあと、彼は一通の手紙を手渡してきました。
出会い系サイト好きな彼がわたしに宛てて書いてくれた、初めてのラブレターでした。
「お前の笑顔を一生守っていくから」という言葉で締められた
その手紙を、彼が席を離れている間に読んで、涙を堪えました。
この人を選んで本当に良かった、としみじみ思いました。翌日はふたりで横浜に出かけ、以前わたしが勤めていた
みなとみらいで、わたしがよく通っていたお店のランチを食べ、
インテリアショップを回り、映画を観ました。その帰りの電車の中で、彼が
「早く婚約指輪を買わなくちゃね。」と言い出しました。
実は、前回彼と銀座でブランドショップを回って指輪を見たあと、
わたしの中には婚約指輪についての引っかかりが生じていました。
ブランド物の指輪は素敵でしたが、お値段もご立派で、
「果たして、そんな指輪がわたしに相応しい物なのだろうか?」と。昔から、わたしには一つのこだわりがありました。
それは、自分の身の丈に似合わないものは身に付けない、ということ。
だからそれが、たとえ婚約指輪だとしても、自分に見合う、
自分に相応しい物を身に付けられる方がいいと思っていました。わたしたちは、ブランドの洋服を常に身に着けているわけでも、
ブランドのバッグを持ち歩いているわけでもありません。
“今の自分に似合う物”にこだわって物を選び続けてきたわたしは、
決してアンチブランド派ではないけれど、婚約指輪についても
彼の気持ちさえこもっていれば、ブランドタグがなくても、
ダイヤじゃなくても、よいと思っていたんです。
そういう物を選んでもらいたいと思っていたんです。きっとわたしがブランドのジュエリーの似合う女になれたときには、
彼が今よりもっとそれを買うのに相応しい男になってるはずですから。どう伝えたら、分かってもらえるのか整理できていなかったので、
そんな気持ちを、ブランドショップを楽しそうに回る彼に言えずにいました。
「これ、着けてみなよ」と言われるままに試してみるのは楽しかったけど、
どの指輪もわたしに相応しいものではないように思えました。